母さんの言う”紫璃ちゃん”とは、
ひよちゃんのお母さんのことだ。
なんでも、母さん達は同級生らしく、
仲の良かったおばさんのことを
昔からそう呼んでいた。
「へ?何で?」
俺が尋ねると、
「ひよりちゃんが昨日、
お友達の家に泊まったみたいで、
今日はその友達と行くんだって」
俺たちの会話に、急に郁翔が
「友達って誰?」
と、身を乗り出して尋ねた。
「さ、さぁ…?
女の子の友達みたいだけど?」
母さんは郁翔の変わりように
びっくりしたのか、少しどもって答えた。
「…三橋かな…」
席に着きながら、郁翔が小さく呟く。
「…はっ、過保護だな〜」
俺は鼻で笑いながら言った。
(やべ…っ、いつものクセで
ひねくれ風に言っちまった…!)
俺は横目でちらりと郁翔を見た。
