「!?」


思わず顔を上げると、そこには
樹里くんがいた。



「行くよ」


小さく耳元で囁くと、
郁ちゃんの近くを通り過ぎる際に、
私の姿が郁ちゃんに見えないように
棗ちゃんと共に隠しながら、
歩く生徒たちに紛れて通り過ぎた。




(樹里くん…なんで…?)



「…はい、着いたよ」



靴箱に着くと、ぱっと樹里くんが
私の手を離した。



「…あ…」


ありがとう、と声をかける前に、
樹里くんは自分の靴を履き替えると、
スタスタと歩いて行ってしまった。



(いつもなら、もっと絡んでくるのに…)



「ひよ、大丈夫?」


棗ちゃんが私に声をかけた。



「あ、うん…。
棗ちゃん、ありがと」


「…にしても、まさかの
弟がひよを助けるとはね…」


棗ちゃんがうーんと考え込む。



「ま、それもそうか」


棗ちゃんは、一人納得したように
呟いて頷いた。




「…?、どういうこと??」

「んふふ、内緒♪」



棗ちゃんは楽しそうにウインクした。



「さ、教室行くー…にしても、
また兄と会うことになるのよね…。
どうする、ひよ?」

「あ……」




ふと、朝の二人の光景を思い出す。




「私は……」



私、どうしよう…。