棗ちゃんは、私の話を聞き終わると
ゆっくり尋ねた。
「……ひよはさ、梨本兄のどこが
そんなに好きなわけ?」
「え…?や、優しいとことか…?
男らしいっていうか…
正義感が強いとことか…かな?」
「え?あれが?あれは
まだ甘々レベルじゃない?」
棗ちゃんがバッサリと言う。
「そ、そんなことないよ!
でも優しい男の人って素敵でしょ??」
「それも魅力の一つだろうけど、
優しすぎてもダメなことってあるけどね」
私が棗ちゃんを見ると、
棗ちゃんは少し眉をしかめて笑った。
(棗ちゃん…?)
「で、話は戻るけど、あんたは
あの二人に会いたくないから
家に帰らなかった、と?」
棗ちゃんの質問に私は頷いた。
「…………分かった。
今日、あたしんちに泊まってく?」
しばらくして思いついたように
棗ちゃんが尋ねた。
「え…」
私は驚いて顔を上げた。
「あぁ、安心して。あたしから
おばさんにちゃんと連絡しておくし。
その顔じゃ、帰りづらいんでしょ」
優しい親友の気遣いに、
私は甘えることにした。
その日の夜、
私は泣き疲れていたせいか、
すぐに深い眠りへと落ちていった…。
