「……私、帰るね。じゃ」


ひよちゃんは俺の横を通り抜ける。



「待って」

俺はひよちゃんを呼び止めた。




「…何?」

まだ何かあるのかと言いたげな
ひよちゃんが振り返る。




「今さっき、郁翔のこと見てたでしょ」


ひよちゃんの眉が少しピクリと動いた。




「…見てたら何なの?」

相変わらずの冷たい声が返ってくる。




「さっきの郁翔の隣にいたあいつさ…」


めげないで続けようとした時、



「やめてよ!!!!!」

ひよちゃんが怒鳴った。



「…っ」

あまりの声の大きさにびっくりした。




「…っ、ごめん…」


ひよちゃんは小さくつぶやくと、
踵を返して行ってしまった。