『──私ね、郁くんと
付き合うことになったんだ』



───あの時、あいつはそう言ってた…。



ひよちゃんがどんな思いで
郁翔を見ていたのかも知らずに、
郁翔はあいつと付き合った。



ひよちゃんに視線を移すと、
今にも泣きそうな顔になっている。



ひよちゃんの辛い顔を見るたび、
ひよちゃんが郁翔をどれだけ好きなのか
思い知らされる。




「…ひよちゃん」


俺はひよちゃんに声をかけてみた。




「…樹里くん」


ひよちゃんは呼ばれたのが俺だと
分かって、少し嫌そうな顔をした。




「なに見てるの〜?」

気にせずに俺が尋ねると、




「別に。なんでもないよ」

と、冷たく返された。