私はそっと樹里くんの頬に触れた。



「…私は、自分の人生を、
自分で決めただけだよ」


その言葉に、樹里くんが押し黙る。


「樹里くんが私のことで、
人生を棒に振るなんてダメ。
そんなの、私が許さない」



ごめんね、ってずっと
心の中で謝り続けてる。


本当に馬鹿な私でごめんね、って。


こんな不甲斐ない私じゃ、
樹里くんには重荷になるだけ。




「…嫌だよ……俺には…ひよちゃんが
いなきゃ…ダメなんだよ…っ!
女々しい奴だって思われても、
傍に居たいよ…!」

「樹里くんは、充分男らしいよ。
付き合ってて知った良いところ、
たくさんあるもの」

「…じゃあ、なんで…っ」

「言ったでしょ?…私が自分で、
自分の人生を決めたんだ、って」




"人生"


自分の事だから尚更、その言葉は
やっぱり重いもの。


それを分かっているのか、樹里くんは
泣きながらも私の言葉に耳を傾けている。



「……ひよちゃん、これからは
一人で泣いたりしない…?」

「泣かないって約束するよ」

「ホントに一人で大丈夫なの…?」

「うん、平気だよ」

「…絶対に?」

「うん」


彼は私が頷いたのを見ると、涙を拭いた。