「…私たち、別れよう…」
私はできるだけ静かな声で告げた。
「…え?」
彼が一瞬理解出来ないといった顔で、
私を見つめた。
「…私、樹里くんのことを、
嫌いになったわけじゃないよ。
樹里くんのことは、今でも好き…。
本当に大好き………」
私はにこりと笑顔を見せる。
「だけど、これからの樹里くんの人生を
私のことで縛られて欲しくない…。
勝手なこと言って、ごめんね……。
私には…樹里くんの笑顔を奪うなんて事、
できないよ……」
「ひよちゃん…俺は…っ!」
「お願い。私の最後のお願い…聞いて?」
私は酸素マスクを外した。
「…笑って?」
私自身も精一杯笑って見せた。
「私、樹里くんの笑った顔が
一番好きなの」
「…ひよちゃん…」
彼の頬を涙が伝う。
私は彼の涙を、ぎこちなく指先で拭う。
「…っ嫌だ…これが最後になるくらいなら、
笑いたくなんてない…っ!
別れることになるくらいなら、俺は
笑わない…っっ!!」
「樹里くん」
「俺が傍に居るよ!俺が傍にいて
いつだって支えるって、何度も
言ってるじゃん…!それの何が
不満だって言うんだよ…!」
「不満なんかじゃないよ。
その気持ち、すごく嬉しいと思うよ」
「だったら、なんで…!」
