私はその背中を追うことができなかった。
いつの間にか、私を足枷(あしかせ)が
邪魔をしていて、私に追うことを
許してくれなかった。
『キミはもう、歩けないかもしれない』
誰かの声が私に語りかけてくる。
(これは…何?夢…?
歩けないかもしれないって、何?)
私、なんでこんな暗い場所に
一人でいるのだろうか。
そうこう考えているうちに、
樹里くんの背中は完全に
女の子と闇の中へと消えてしまった。
「…や……いやぁ…っ…!」
私は泣き叫ぶことしか術がなかった。
これが全て悪い夢なら早く覚めて欲しい。
こんなの、私が望んたことじゃない。
でも、悪いのは私のほうだ。
樹里くんの言うことも聞かずに、
私は家を飛び出してきた。
走っていたら、子供が
車に撥ねられそうになってて…。
そこからの記憶は完全に吹き飛んでいる。
気付けば体が重くて、
目を覚ますことができない。
…でも。
誰かが、私の手を握ってくれているような
そんな気がしていて。
誰かが温かい声で私を呼んでいる。
