「ひ…ひよりは………死んだりしない……?」
震える唇であたしは尋ねた。
「…俺には、まだ分からない…。
ひよりの状態によるから……」
何とも言えない、と言葉を濁しながら、
梨本兄は椅子に座って俯く弟を見た。
「弟は、何でこんな事になったのか、
知ってるの…?」
あたしが尋ねると、梨本兄は分からないと
答える代わりに首を横に振った。
「…梨本弟」
あたしはフラフラな足取りながらも、
弟の前まで歩み寄る。
「…あんた、なんか知ってるの…?
何で……なんで、ひよりが
こんな目に遭ってるのよ…!」
弟の肩を揺さぶりながら問い質すも、
弟は何も答えず、俯いたままだった。
それが、あたしを余計に苛立たせた。
「……っねぇ!なんで!?
なんでなのよぉ…っ!!!!!」
泣き叫ぶあたしを橘が弟から引き離した。
「よせ、棗。ここは病院だ。
ほかの患者に迷惑がかかる。
それに今、弟を責めたところで
状況は変わらないだろ」
あたしがぴたりと止まると、橘は
あたしの肩から手を離した。
「あんた、ひよりの傍に居たんじゃ
なかったの…?」
弟が少し長めの前髪の隙間からのぞく
やつれた瞳であたしを見上げた。