(橘……)
動揺から冷えた体が、橘の温かな
手によって温度を取り戻していく。
「…とりあえず、病院行こう。
話は、それからにしよう。な…?」
そうだ。
先にひよりに会わなきゃ。
「うん…!」
落ち着きを取り戻したあたしは、
橘に連れられて
ひよりが運ばれた病院に来た。
病室の前まで来ると、梨本兄弟が
廊下の椅子に座っていた。
「三橋…!それに、八尋まで…」
兄の方があたし達に歩み寄ってきた。
「なぁ、綾瀬さんの状態って…?」
あたしの聞きたかった言葉を、
橘が代わりに心境を察して聞いてくれる。
「緊急手術は成功したけど…。
まだ意識が戻らないんだ……」
梨本兄が苦しそうに答える。
その顔を見て、状況が深刻なことに
ますます不安が募った。