「……傍に、居たかった……。
…でも、泣かせた……」


弟はそれだけ言うと、また黙り込む。


「…っ」


踵を返して、あたしは病室に飛び込んだ。



でも、目に飛び込んできたのは、
なんとも言えないものだった。



顔は所々擦りむけ、頭には包帯、
片腕と片足にはギプス…、そして
酸素マスクをする、ひよりの姿。



初めて見る、親友の弱々しくも
痛々しい姿がそこにあった。



「…っっ……!」


その姿を目にしただけで、涙が溢れた。



「棗ちゃん…?」


ひよりのおじさんとおばさんが、
あたしの姿に気付く。



「あ……こんばんは…」


あたしは慌てて涙を拭いて、
二人に挨拶した。



「遅い時間なのに
わざわざ来てくれたのね」


おばさんが、あたしをそっと
椅子に座らせてくれる。




ピッ、ピッ、ピッ…と、規則的に鳴る
脈拍の機会音が部屋に静かにこだまする。