それでも君が好きで。





「ひよちゃん…どこ行ったのかな…」


とりあえず隣の
ひよちゃんの家を訪ねてみる。



「あら。えーと、樹里くんかしら?
どうしたの??」


おばさんがびっくりしたように俺を見る。



「ひよちゃん、いませんか?!」

「ひより?さっき出て行くって
言ったきり、帰ってきてないけど…」

「そ…ですか……。すみません、
急にお邪魔して」

「樹里くん達なら別にいいわよ〜!
あ、もしひよりが帰ってきたら、
連絡させるわね」

「すみません、お願いします!」


おばさんに頭を下げると、
俺は当てもなく走り続けた。



母さんのおかげで、ひよちゃんを
探しに出ることはできたけど、
ひよちゃんがどこに行ったのか
見当もつかない。


「…っ、くそ…!」


自分の招いた事態に腹が立つ。


「なんでこんな時に限って…!」


結城の時のケースを思い出して尚更、
自分の弱さに怒りがこみ上げてくる。


「…っ」


街の方面に出た途端、何だか騒がしい
人ごみが目に入る。


「…?」


どうやら事故が起きたようで、現場は
街ゆく人々の足を止めている。


人ごみの中で、救急車の赤いランプが
チカチカと回っていた。