「あんたたちの進路がどうとか
まだはっきりと聞いてないけど、
受験するなら、一石二鳥でしょ?」

「お、俺は就職する予定だっつの!」

「あら。なら、バイト代出すわよ?
それなら、あんたにも
利点は出てくるでしょ?」

「…っ」



あまりの横暴さと、確かに悪くはない
条件に、言葉が出ない。



「どう?頼み、聞いてくれる?」

「…わ、分かったよ!
すればいいんだろ、すれば!」

「あら、さすが私の息子♡
じゃ、よろしくね♪」

「よろしくね、樹里くん!」


風英はそう言うと、すりすりと
頬を擦り寄せてきた。



「じゃ、早速よろしくね♪」


さも当たり前かのように言うと、
母さんは部屋を出ていった。


「へ…っ!?」


部屋には俺と風英が残される。



「あ、あのさ…?もしかして、
今からお願いする、とか言わないよね?」


俺が尋ねると、風英はニコッと笑う。



「そうだよ〜!今日は樹里くんが
先生だよ!」

「えぇ!?お、俺、無理だよ!!
これから大事な用があるんだってば!!」

「無理なの…?そんなぁ……。
樹里くんたちに会えるの、
楽しみにしてたのにぃ……」