それでも君が好きで。




「今、ひよりちゃんが
泣いてウチを出て行ったけど、
どういうことかしらぁ……??」


笑顔を崩さずに母さんが尋ねる。


何だかコワイ…。
笑顔が全然笑ってない顔だ。



「おばさん!」


背後で風英が嬉しそうな声をあげて、
母さんの持ってきたお菓子に飛びつく。



「はい、これ。家にある
お菓子で悪いけど、食べてね」

「いいえ!十分ですよぉ♪」

「じゃあ私、ちょっと樹里と話が
あるから、お菓子食べててくれる?」


はーい、と風英がお菓子にありついた頃、
母さんが俺を振り返って
部屋の外へ連れ出す。



………………まずい。


俺は少し後退る。




「……全く、女の子泣かすなんて
あんたってばサイテーね!!
母さんはそんな子に育てた覚えはないわよ!?
今すぐ謝りに行きなさい!」

「い、言われなくてもそのつもりだよ!」



言い返した途端、母さんが俺の頭を殴る。



「分かってんならさっさと行きなさい…?」


母さんは笑顔だけど、
これは怒ってる笑顔だ。


俺は慌てて家を飛び出す。


でも、後々よく考えれば、
母さんなりの助け舟だったことに気付く。