「棗ちゃんはどうするの?」

ひよりが尋ねた。


「んー……あたし、実はデザインとか
好きでさ。そういう専門に
進もうかなって」

「へー、意外だな。てことは、三橋は
県外の学校行くとか?」

「いや?地元にちょうど専門学校あるし、
わざわざ地元離れる必要ないかな
って思ってさ」

「あ、そっか。それに棗ちゃんには
八尋くんがいるしね」

「まぁ、ね。あいつも
デザイナー関係に進みたいからって
同じ専門学校だとさ」

「いや、八尋がそんな特技?が
あったことにびっくりしたわ」


樹里が少し引き気味に言う。



「そういう梨本弟はどうなのよー」

「えー、俺はー…」


どんどんみんなの会話が
遠のくような気がした。


決めてないのは、俺だけ。


俺は、何したいんだろう。


みんなみたいな夢なんてないし、
特技もない。


このまま、進路なんて決められないままで
過ごしてしまうのだろうか。


俺は一人、怖くなった。


みんながどんどん進んでいく中で、
俺だけ置いてきぼりになっていく。


足元が真っ暗で、何も見えない。


こればかりは、泣いても叫んでも、
誰も助けてくれることじゃない。


自分で選ばなきゃいけないんだ。
自分の歩む道を。



自分の道を選ぶことが、こんなにも
難しく思ったのは、
生まれて初めてのような気がする。