だって、今、振り向いたら情けない顔を
ひよりに見せてしまう。



こんな顔見せて、ひよりに
また心配かけたくない。


俯いてぎゅっと唇を噛み締めると、
俺の目の前に誰かが立っているのか、
シューズの爪先が見えた。



顔を上げると、そこには結城がいた。



「い…梨本くん…。大丈夫なの?
もう動いて平気なの?」

「……"結城"が心配すること
なんてないから。別に平気」


俺はあえて冷たく答えた。


結城の横を通り過ぎて、
自分の席につく。


時計を見ると、時刻は
ちょうど昼頃だった。


俺が倒れたときは二時間目のこと。



「…二時間も寝てたのか…」


自分の失態に、少し嫌気がさした。


「腹減ったな…なんか食いに行くか…」


ちょうどひよりが、三橋と
どこかに向かおうとしているのが見えた。



「あれ?樹里、お前なんでひよりと
一緒に行かないの?」

「今から俺、購買行ってくるんだよ。
ひよちゃん達の分も買って、
屋上行くんだ」

「え?でも、今二人とも出てったけど…」

「シート敷きに行くんだとさ」

「へぇ……あ、のさ、お前達さえよければ、
俺も混ぜてくれないか…?」