「…そうだっけ?? なぁ、ひより」



教室の前で立ち止まって、
ひよりに尋ねた。


「なぁに?」

「…お前の夢ってなんだ?」

「夢…?」


ひよりが俺の唐突な質問に
きょとんとする。


「夢、かぁ……。
そんな明確に考えたことないかなぁ……」

「やっぱり、そんなもんなのかな」


仲間が見つかったような気がして、
少し嬉しくなる。


「あ、でも、そろそろ
進路のこともあるし、ちょっと
考え始めてはいるんだけどね…」


その言葉に少しドキリとした。


「…もう決めてること、あるのか?」

「え?うーん、まぁ…。
私、こう見えて、人の面倒を
見るのとかも好きだから、
そういう仕事に就きたいなって…」

「…ひよりらしいな。
その夢、叶うと思うよ」



やっぱり、みんな真面目に考えてる。


こうも周りが決め始めていると、
置いてかれた気分になる。


「…? 郁ちゃん…?」


背後で呼び止めるようなひよりの声が
聞こえた気がした。


だけど、俺は振り返らないまま、
教室に入った。