「別に、悩んでることなんてないよ。
だから、ひよりが心配する事なんて
何もないから」


俺はそっとひよりの頭を撫でた。


「嘘言わないで」


ひよりが真剣な声で言った。


「郁ちゃんの嘘、私が
見抜けないとでも思う?」


真剣なひよりの顔が、俺を追い込む。


「何年、郁ちゃんのこと見てきたと
思ってるの…?
私がそんな誤魔化しに、
騙されるわけないよ!」


…あぁ、ひよりにまたこんな顔させて、
俺は一体どうしたいんだろう…。


「お願いだから、もう、
私に嘘なんてつこうとしないで…!」



ひよりの目からこぼれ落ちた涙が、
俺の頬へと落ちていく。


「…ごめん、ひより…」


体を起こして、そっとひよりの頭を
胸に抱き寄せた。


「泣かせない、って決めたのにな…。
結局、俺が一番……お前のことを
泣かせてるんだな…」


俺がそう言うと、ひよりはふるふると
首を横に振った。


「…妹みたいに思ってたけど、
こんなに綺麗になって……。
どんどん可愛くなってさ…。
もう俺たちの知ってるひよりは、
ここにいないんだな…」


俺は呟いた。