「全然普通かな。俺、
専門学校とか行くのもいいかなって
思ったけどさ、また親に学費とか
迷惑かけちゃうじゃん?」

「別にそれには、母さんは
俺達の進路の為なら、って…」

「母さんはそう言ってるかも
しれないけど、俺が嫌なんだ。
少しでも母さん達を安心させたい。
だから、俺は働くよ」

「……したい仕事でもあるのか?」

「今すぐにこれだ、って細かいことは
まだ決めてないよ。
これから向いてそうなの見つけてくだけ」



樹里が淡々と答える姿を見て、
俺は自分のしたいことが不明確なことに
胸騒ぎを覚える。


このままでいいわけじゃない。


俺は……一体何をしたいのだろうか…。


樹里みたいに頑張れる対象とか、
そんなものがあれば、やりたいことが
見つかってたのかもしれない。


けど、今の俺には何もない。


どうすれば、良いんだろう…。



「何?急に進路なんかの話して。
もしかして、悩んでる?」


樹里が見透かしたように訊いてくる。


「そ、そんなことないよ。
ただ、お前は進路どうしたいのかなって
思ってさ」

「ふーん…?」


樹里はそう答えると
リビングへと入っていく。


俺もその後を追うようにリビングに入る。