兄妹みたいに育った
幼馴染みなんて関係ない。
私の方が樹里くんを、
絶対に幸せにできるんだから。
「樹里くん」
私は微かに彼の名前を呟く。
「待っててね、今、
救い出してあげるから……」
昨日今日、樹里くんを好きになった
あんな子になんて渡さない。
不幸にしかできないに決まってる。
樹里くん、目を覚まさせてあげる。
微かに握り締めた拳が、
いつの間にか強い力に変わって、
手のひらが少し赤らんでいた。
(こんなの、痛くなんてない。
きっと痛いのは、樹里くんの方……)
ふと、樹里くんの視線がぶつかる。
「!」
私は胸の内が温かくなる感覚を覚える。
「─でね、ひよちゃん…」
樹里くんの視線は
すぐに綾瀬さんに戻される。