さっきより唇を噛み締めると、
錆びた鉄のような香りがした。
気がついたら、それは血で。
血が滲むほど噛み締めていたんだ
と思うと、ぞっとした。
でも、不思議と嫌じゃない痛み。
それぐらい、彼が好きなんだって
実感したから。
「…でも、あの子は邪魔だわ…」
本当、邪魔だ。
あの子は彼の目を眩ませる、魔女。
彼はあの子の傍にいちゃいけない。
あの子の傍にいたら、彼はきっと
不幸になる。
だから、私が目を覚まさせてあげなきゃ。
彼を救えるのは、私だけ。
魔女から、きっと彼を救い出してみせる。
ねぇ、魔女さん。
今だけ、時間をあげる。
その間、存分に幸せな気分に
浸っていればいいわ。
後で、地獄に叩き落してあげるー…。