そこから、数秒だけ
時間が止まったように感じた。


「いたいのいたいの、とんでけー」


耳元でそっと樹里くんが言った。


「……………ぷっ…」


あまりにも可愛すぎて、
私はつい笑ってしまった。


「何それー、最近は誰も
もう言わないよー」


私が笑うと、樹里くんが
むぅ、と膨れながら私を抱きしめ直す。


「だって、少しでも良くなって
欲しかったんだよ」


樹里くんは少し赤くなった顔を、
私の肩に埋めた。


「…でも、ありがと」


私はそっと答えた。


「…ホントにそう思ってる?」


樹里くんが尋ねた。



「思ってるよ」



私が答えると、満足したのか
私の手を引いて立ち上がる。


「じゃ、ホームルーム始まるし、
戻ろっか」

「うん!」


私たちは手を繋ぐと、教室へ向かった。