「なんです?」
「あ、いえ。お話って何だったのかな
って思って…」
「いえ、今日は特に大した議題は
ありませんよ。
ただ、あなたが話を聞いていなさそう
だったので声をかけさせて
もらったまでです」
私はそうか、と言う代わりに
頷いてみせる。
丁度、委員長からの説教を聞いている間、
視界に樹里くんが入った。
樹里くんは隣の綾瀬さんに夢中だった。
最近、あの二人は付き合い始めた。
その噂も少しばかり耳にはした。
でも、樹里くんの気持ちを
知っていた人からは、
応援の声も見られる。
けれど、中には私のように
二人の関係を良く思わない者もいる。
賛否両論、といったところなのだろう。
当の私といえば、梨本くんとの破局を
まことしやかに囁かれていた。
別れたことは事実だし、尋ねられても
否定はしない。
彼への好意が私になかった、
ただそれだけのことなのだから。
彼も私のことを理解して、
別れる選択をした。
これで、彼を救うことができる。
あなたを心から愛するのは、この私。
