─教室─


「おかえりー。どこ行ってたの?
…ってか、どうしたの?そのほっぺた」


今日は用事があって先に行っていた
樹里くんが、私の所に駆け寄ってきた。



「あ…ちょっと転んじゃって…。
保健室行ってたんだ」



…頬の湿布は、ホントは
郁ちゃんが貼ってくれたもの。


別に平気だと断ったのだけど、
あんまりにも心配して
悲しそうな顔をするから、断れなかった。


でも、樹里くんはヤキモチ妬きだから
素直に答えると、
怒っちゃいそうな気がする。



「そうなんだ。痛そう…大丈夫?」


樹里くんは私の頬にかかる髪をよけて、
頬の腫れにそっと触れた。


「見た目ほど痛くないよ。大丈夫」


私は笑って見せた。


視界の端で、結城さんが
こちらを見ていることに気がつく。


いや、見ているというよりかは
睨んでる、に近かった。


私が余計な事を言うんじゃないかと、
見張っているのかもしれない。



「そ、それより用事は済んだの?」


私は樹里くんに尋ねた。


「あ、うん。大丈夫だよ〜」


樹里くんが笑って答える。