「そんなの、この前聞いた理由じゃ
気に食わない?」


結城さんが首をかしげながら言った。


「…そうですね。それじゃ
私は納得しませんね」


私は答えた。


「あなたが樹里くんを好きで、
樹里くんの彼女である私に、別れろって
言うのは分からなくもないです。
けどそんな簡単に、はいそうですかと
別れられるものじゃないことくらい
あなたには分かると思いますけど」

「…そうね。あなたならそう言うと
思ってたわ。
私だって、そんな簡単にあなたが
別れてくれるなんて思ってないもの」

「……結城さんって、そんな軽い人だと
思いませんでした」


私はぎゅっと拳を握り締めた。


「郁ちゃんは、あなたのこと本当に
大事に思っているのに、
想ってきたあなたに裏切られて、
どれだけ傷付いてるのかって
考えたことないんですか…?」

「……郁くんは、とても私に
優しくしてくれた。
病気を持っていることを知っても、
ずっとそばにいてくれた…。
郁くんには本当に感謝してる…。
けど、郁くんには悪いけど、
最初から私に彼に対する好意なんて、
なかったのよ…」



彼女の口から聞かされた言葉が
私の心を痛める。