それでも君が好きで。




「…あなたにとって普通のことが、
私達クラスメイトからしたら、
とても羨ましいことなの」


彼女がすっと私の前に立った。


「!」


それは、一瞬だった。


ハッとするよりも早く、
彼女の掌が私の頬を叩く。


私は叩かれた勢いで
しゃがみ込んでしまった。



「っ…」


びりびりと頬に痛みが走る。



「…っ…あなたなんかより、
私の方がずっと樹里くんを
好きだったのよ!
…なのに、なんであなたなの…!」


彼女が泣きながら私を揺さぶり、
彼女がもう一度手を振り上げた時…。



「…悪いけど、そこまでにしてくれないか」


と声がした。



「…い、郁くん…」


彼女が気まずそうに私から手を離す。




「大丈夫か、ひより」


郁ちゃんが私をゆっくりと立たせる。



「う、うん…」

「…"結城"。もうお前は
俺達に関わらないでくれって言ったよな」


郁ちゃんの冷たい声が
結城さんに浴びせられる。


「…っ」


不満そうな顔で結城さんが
私達を見ている。