それでも君が好きで。




「…っ何よ!いいじゃない!
綾瀬さんは幼馴染みっていうだけで
あなた達の傍に堂々と居れて……!」


ちょっと待て。
こいつは一体何を言ってる…?


「何訳分かんないこと言ってんの、お前…。
ひよちゃんは幼い頃から互いを
知ってる仲なんだから、
近くにいたって普通だろ?」


俺は呆れてため息をついた。


「それが許せないの…!
あの時キスしたの、ホントに
偶然の事故だとか思ってる?」

「!…………計算済みだったって訳か」



俺の言葉に結城がニコッと笑う。



「そう。始めから全部計算だったの。
樹里くんに近づく為の、ね…?」


結城の細い指が俺の頬に触れる。


「樹里くんは私といる方が
きっと幸せになる…」


結城の唇が近付く。


「……ふぅん?…
またそうやってひよちゃんのことを
陥れたいと思ってるんだな?」


俺の言葉にぴたりと結城が止まった。


「…悪いけど…」


俺はつかつかと階段のある
方向へと歩き出す。



「ひゃっ…!?」


壁の影に隠れるようにしていた
ひよちゃんの腕を引くと、
その体を抱き寄せる。


「じゅ、樹里く─…んっ?!」


そして、結城の目の前で
見せつけるようにひよちゃんにキスをする。


もちろん、その近くに
郁翔がいる事も知りながら。