それでも君が好きで。




「は?」



突然訳の分からないことを言われて、
素っ頓狂な声が出た。



「…だからっ……私は…っ……
樹里くんのことが好きなの…!」


結城が頬を染めて言った。


「…お前さ、自分が
何言ってるか分かってる?
お前は郁翔と付き合ってるんだぞ?」

「分かってるわよ…」

「じゃあなんで今更
そういうこと言うんだよ」

「…好きだから………」



目の前の彼女の表情に苛立ちが募る。



「ッ…いい加減にしろよっっ!!!!」


ダァン!と拳を壁に叩きつける。



「お前…!少しは
あいつの気持ちも考えろよ…!!」


こいつが郁翔を傷つけたい気持ちを、
俺が許すわけにはいかない。


郁翔は…自分の兄なのだから。


「…お前がひよちゃんを
鬱陶しいと思ってるのも知ってる。
けど、それで傷付けていい理由には
ならないだろ…!」

「…別に…私は、綾瀬さんを
悲しませるつもりなんて…」

「なかった、って言う気か……?」


俺は眉をしかめた。