「じゃ、行こっか」
三橋と八尋の後に続いて
屋上を後にする。
「…あ」
三橋が階段を下りる足を止めた。
「? どした?」
八尋がそれを覗き込むようにして、
前に視線を移す。
「…結城さん…」
ひよちゃんの口から言葉が零れた。
俺もみんなの視線の先を見つめると、
そこには確かに結城が立っていた。
「あ、樹里くん」
結城が嬉しそうに言う。
「…行こう、ひよちゃん」
俺はひよちゃんの手を取ると、
階段を足早に降りていく。
「……」
すれ違う瞬間、結城の顔が
悔しそうに歪んでいた。
背後で三橋が結城に近付いて、
話しかける気配を感じながらも
俺たちは振り返ることなく歩いた。
