この人を守りたいって、
愛しいって思うのも全部、
樹里くんが好きだったからなんだ…。


そう思えた途端、私の目から
涙が溢れ出した。


樹里くんがぎょっとして私を見る。



「え…!?な、なんで泣いて…っ!?」

「ち、違…これは…っ…」



止めようと思っても、涙は
私の意思に反して止まってくれない。



「うぅー…っ…」


私は情けなく、子供みたいに泣いた。


「泣かないで」


そっと懐かしい香りが、
私を優しく包み込む。


あぁ、この香り…。




『──…! ひよちゃん、大丈夫!?』

『うわぁああぁああん!
いたいよぉおおっ!』

『ひよちゃん、なかないで!
ぼくがひよちゃんをおぶってあげる』



そう言って背負ってくれた男の子…。
その男の子の香りに似ている。


男の子は家に着くまで、
私をおんぶしてくれてたんだっけ…。



私はゆっくり目を開けた。


「あの時も…こうして、私のこと
慰めるようにしてくれたっけ…」


私が呟くと、私を抱きしめていた
樹里くんが、


「ふはっ、そうだったっけ」


と笑った。