胸の内から何か黒い靄(もや)が
広がってきた気がして、
私は胸をぎゅっと押さえた。



(何なの…この変な気持ち…)



「…だから、どうしていいか
分かんなくて…そしたら、そこに
ひよちゃんがいて……」


話を続けていた樹里くんと目が合う。


その途端、また心臓がどくんと跳ねる。



「ひよちゃん…?」


心臓は早く脈打ったまま、
顔へとその熱を帯びさせていく。


「…っ…」


よく分からない、ぐるぐるする感情に
私は目を瞑る。


好き、って気持ちは一体…何?
どんなものなの…?


分からない。


「…分からないよ…私には…」


私は呟いた。


目を瞑ると浮かぶのは、
樹里くんと結城さんの二人のこと。


思い出すだけで、胸がチクチクと
針で刺されたように痛む。


こんな汚い気持ちが
私の中に眠っていたのだと思うと
嫌で嫌で仕方がない。


でも、この気持ちは…
郁ちゃんの時と似てる。


郁ちゃんが結城さんといるのを
見かけた時もこんな気持ちになった。


嫌で嫌で仕方なかった。


どうして?って…。
離れて、って……。


なら、この気持ちは…。


「私…樹里くんが……好き……?」



言葉に出した途端、私の心臓は
大きく跳ねた。