それでも君が好きで。




「そうじゃないよ!…樹里くんだから…。
樹里くんだから嫌じゃなかった…って…」


棗ちゃんが頬杖をついて私を見る。


「…それって、
梨本弟のことが好きってこと?」

「…!」


私はドキッとした。



「わ、分かんない…けど、
そういう、ことなのかな…?」

「あたしに聞かれても」


棗ちゃんに咄嗟に返される。



「…でも、向き合いたい人だってことは
確かだよ。私がそう思うんだもん」

「…兄のことは忘れられてるってことね」

「郁ちゃんのことは…大切な幼馴染みだよ」


私は笑顔で答えた。



「…そう。なら、頑張ってね。
私は笑顔のあんたを待ってる」


棗ちゃんも笑顔で言ってくれた。


「…うん!」



私はぎゅっと手を握ると、屋上を出た。



好きかどうかなんて、まだ分からない。


でも、彼の優しさに触れるうちに、
私も彼を大切にしたいって思った。


だからこそ、きちんと
彼のくれる気持ちにも
向き合おうと思えた。