それでも君が好きで。





「むしろ、頼ってくれて
ありがたいって思ってるよ…」


私は彼の背中を撫でながら言った。


私はようやく、
分かり始めてきているのかもしれない。


彼を”愛しい”と。


今だってこうしていても、
ドキドキしている。


どう慰めるか、なんて以前に
守ってあげたい、と思っていた。


今、腕の中にいる彼はなんだか
幼く見えて、弱々しくも感じる。


始めは同情にも似た気持ちのような
気もしなくはなかったけど、
それを打ち消すほどの彼の切ない笑みが
こんなにも私を突き動かした。


こんなにも”愛しい”と思って
誰かを抱き締めるなんて、
普段の私なら取らない行動のはずなのに。



「!」


ふと、樹里くんが私を抱き締め返す。


「…ありがとう…」


樹里くんはそう言うと、
優しく私にもう一度キスをした。



「樹里く──」


名前を呼ぼうとするも、彼の唇によって
それは遮られる。



「…可愛い…」


唇を少し離して、彼は告げる。


「…も、もう…可愛くなんて…」


ない、と言う前にまたキスされる。


「…も、もう、ダメだよ…!」


私は慌てて彼を突き放した。