「ゆっくりでいいから、
俺のこと、好きになってよ…」
樹里くんはそう言うと、
私を抱き締めた。
とくんとくん、と私の胸が高鳴る。
「…わ、分かっ…た…」
変な返事になってしまったけど、
私はとりあえず頷いた。
「うん」
樹里くんは頷きながら、
もう一度私を抱き締めた。
「…それで」
樹里くんが不意に切り出した。
「な、何…?」
私は抱きしめられた体勢のまま答えた。
「結城のこと、なんだけど…」
結城さんの名前を言った途端、
少し樹里くんの拳に力が篭った気がした。
「結城さん…?」
私は少し樹里くんから体を離した。
「あいつとのことは、事故だから…」
事故…。
それって、あのキスのことかな…?
私はじっと樹里くんを見た。
