「ひゃ…!?」
樹里くんが私を抱き寄せた。
「俺、真剣だから。もう一度
真面目に申し込んどく。
俺と、付き合って」
樹里くんの震えるような声が、
私の体を震わせる。
「好きで好きで、たまんないんだよ。
本当の事言ってしまえば、
郁翔なんて見て欲しくない。
郁翔となんて話して欲しくないんだ」
私がまだ迷っていることに
気が付かれていたんだと思うと、
急にドキッとした。
「で、でも、私はもう…」
郁ちゃんなんて見ていない、そう
言おうとした時、私の唇に
樹里くんの唇が重ねられた。
「知ってるよ」
唇を離して樹里くんが言った。
「…迷うのは仕方ないんじゃない?
そんなすぐに立ち直れるなんて
俺は思ってないよ」
またくしゃっと優しい笑顔で答える。
「そ、そっか…」
私はなんだかその顔を見れなくて俯いた。
けれど、それは樹里くんの手によって
制されて、目を覗き込まれる。
「ゆっくり…」
樹里くんが言う。
