「…どうした?」

『…遅くにごめんね。今忙しい?』

「いや、特に何もしてなかったから
忙しくはないよ」

『…あのね。
明日、迎えに来てもらってもいい?』


碧海の珍しいお願いが聞こえた。



「うん、分かった。
…でも、どうしたんだ?急に」

『郁くんの顔、見たくなっちゃったんだ』


碧海が答えた。


確かに夜も遅い。
会おうと思えば会えるけど、
碧海には良くないこと。



「…碧海。夜も遅いし、そろそろ寝ろよ?」

『うん、ありがと。じゃ…おやすみなさい』



その言葉を最後に電話は切れた。


溜め息を一つついて、
ベランダの柵に寄りかかる。


夜空にはたくさんの星が瞬いていた。


そっと夜空に向かって手を伸ばしてみる。


星は指の隙間でキラキラと輝きを放つ。


「……」


その手をギュッと握り締める。


星は掴めるはずもなく、
キラキラと瞬き続ける。


俺は踵を返すと、部屋に戻って眠った…。