「…ひより?」

「…っぐす…っ」


彼女の涙声が聞こえてきた。




「ひより?」

「…郁ちゃんが…あの人を…
守ってあげたいって思うのは…
当たり前だったんだね…っ…」


ひよりが口を押さえながら、
泣いてくずおれた。



「何も…知らないで……私…っ…」

「知らなくて当たり前だよ。
俺が何も言わなかったんだから」



俺がそう言うと、彼女は泣きながら
首をふるふると横に振った。




「やっぱり、郁ちゃんは…私と違って
優しい人だね……」


震える声で告げられる。


「これ以上…夜風は体に毒だから、
私…もう寝るね…」


ひよりはそう言うと、
部屋に帰っていった。




─『郁ちゃん、幸せになってね』─


少し前に言われた言葉を思い出す。




「そっか……そうだよな…」



頭を少し搔くと、部屋に入った。



……~♪


部屋に入ると同時に携帯が鳴った。


ディスプレイには『碧海』の文字。
携帯を持ってベランダに出る。