「………」

再び沈黙が流れる。



話すことがなくてどうすべきか、
と悩んでいた時。



「…その……私も、
怒鳴っちゃってごめんね…。
でも、あの場ではああするしか
収められなかったと思うから…」


と、ひよりが呟くように言った。



「あんな人目の多いとこで、
あんな騒ぎ起こしたら駄目でしょ?」


ひよりの言葉に俺は頷いた。


「そう、だよな……」



頭に血が上っていて、どの判断が
正しいのかと考える前に、
弟を殴ってしまっていたことは確かだ。

それを冷静だったとは言えない。



「…でも、郁ちゃんが悪いわけじゃない」


ひよりが言った。


「私達も最初からあの場所で全てを
見ていたわけじゃない。
だから、明日はっきりさせなきゃ
いけないと思うの」


きゅ、とひよりの拳が
握られたのに気づいた。