「なんで…何も聞かないの?」
顔を上げて聞くと、ひよちゃんが俯いた。
「……樹里くんが…話したくなさそう
だったから…」
ポツリと聞こえるか聞こえないか
ぐらいの声で答えた。
「でも、樹里くんが話したいって
思うなら、聞くよ」
今度は笑顔で答えた。
その笑顔につきんと胸が痛む。
「いてぇ……」
胸を押さえて小さく呟く。
「あ、もしかして傷、痛む?
先生に言って、もう帰ろうか??」
ひよちゃんが心配そうに
身を屈めながら尋ねる。
俺はそのまま、ひよちゃんを抱き締めた。
「樹里くん…??」
優しい温もりを感じる体に、顔を埋める。
「ひよちゃん…」
愛しさが込み上げて、溢れそうだった。
もうそれは、限界に近いぐらいで。
もう、好きだけじゃ足りない。