支えを借りて歩く道中、
ひよちゃんが言った。
「痛い?…痛いよね…」
その目に僅かに涙を浮かべながら、
俺の傷を見つめる。
こんな時にずるいと思ったけど、
その視線が嬉しくて、
胸がいっぱいになる。
「ここに座って待っててね」
ようやくベンチに着いて、ひよちゃんが
濡らしたハンカチを手に戻ってきた。
「しみるかもしれないけど、ちょっと
我慢しててね…」
ひよちゃんはとんとん、と傷口に
ハンカチを押しあてる。
綺麗に揃った睫毛が微かに揺れている。
「…こんなんじゃ、応急処置にしか
ならないけど、絆創膏貼っておくね」
ひよちゃんは持っていた
除菌ウェットシートで傷口を拭くと、
傷口に絆創膏を貼った。
「まだ痛い?」
ひよちゃんが心配そうに尋ねる。
「……何で?」
俺はぐっと拳を握り締めた。
「え?」
俺の言葉にひよちゃんがきょとんとする。
