ゆらりと目の前に立った郁翔が
俺を殴りつけた。


殴られた勢いで地面を転がる。




「お前…っ…碧海に何してんだよ!!!!」



郁翔が怒鳴りながら、
俺の上に馬乗りになる。


また殴ろうとしたのか、
その腕が振り上げられる。




「郁ちゃんっ!!」


その時、ひよちゃんが俺を庇うように
間に割って入り、抱きついた。



「ひより、退くんだ…!俺はこいつを…っ」

「嫌ッッ!!絶対に退かない!!!!!
こんなとこで喧嘩なんてやめて!!!!!
話も聞かないで樹里くんを殴らないで…!!」



俺にしがみ付いたままひよちゃんが叫ぶ。


郁翔はぐっと握った拳をゆっくり下ろすと、俺から退いた。




「…樹里くん、立てる…?」


ホッとしたように
ひよちゃんが俺に尋ねる。



「う、うん…」


切れた口の端を押さえながら、
ひよちゃんの支えを借りて立ち上がる。



「とりあえず、その傷、
洗えるところに行こう?」


ひよちゃんはそう言うと、
結城と郁翔をその場に置いたまま
俺の手を引いて歩き出した。