それでも君が好きで。




後ろを振り返ってみても、
人の気配も感じられない。



「──ひ」



暗闇に呼びかけようとすると、
後ろからきゅっとシャツの裾が
引っ張られたことに気付く。



「ひよちゃん…?」


ライトで照らすことも忘れて、
思わず暗闇に尋ねる。


「……」


あまりの怖さに声が出ないのか、
返事がない。



「!?」


途端、腕を掴まれて引っ張られた。


その時、引っ張られた衝撃で
ライトを落としてしまう。



暗闇の中を訳も分からず、
引っ張られながら走る。



「ひ、ひよちゃん!?
そんな走ったら危ないよ?」


俺はとりあえず声をかけてみた。

それでも、走るスピードは
変わらなかった。