「それ以上、ひよに近付いたら殺す」
棗ちゃんが低い声で言うと、
八尋くんが慌てて私から離れる。
「妬くなって、棗ー♡」
八尋くんが棗ちゃんに抱きつく。
「お前はいちいち
スキンシップが激しいんだよ!」
棗ちゃんが八尋くんを引き剥がして言う。
「で、でも、
なんで棗ちゃんが八尋くんと…?」
私が尋ねると、
「橘は幼馴染みなんだ。
で、ちなみにさっき橘が言ってた
冗談にしか聞こえない
”将来の相手”でもあるけど」
「えっ…?」
…頭がついていかない。
「えっと…つまり、八尋は
恋人兼婚約者…って事?」
私の横で樹里くんが言った。
「えっ、婚約者!?」
「家のしきたりってやつ。
ま、あたしはしきたりとか面倒だけど、
爺さんがうるさくてね」
「しきたり………」
私はちらりと八尋くんを見た。
「別に金持ちじゃないけど、
そういうしきたりを代々
守ってきた一家だから、従ってるまで」
八尋くんが答えた。
