彼の表情に、私の胸が
ちくりと痛んだ。


彼は踵を返すと、


「気をつけて帰りなよ」


と言って、歩き出した。




私は溢れ出した涙を拭くこともせずに、
ただ立ち尽くす。



今まで優しかった樹里くんの
顔がいくつも思い浮かぶ。



どうして、
こんな風になってしまったのか。



私達、郁ちゃんと同じように
なってしまうの…?


私はこのまま何も言えないままで、
樹里くんと話せなくなるなんて
嫌だよ…!



そう思った時には
私は走り出していた。



彼がこちらを見ている。



手を伸ばせば届く距離にいる
こんなに優しい人を、
傷つけるわけにはいかない。



彼のためにも、私に
できることがあるなら、
そうしてあげたい。



だから……。



「樹里くん…っ!
私…樹里くんの隣にいたいよ…!
だから…っ…樹里くんの…
そばに…いさせてください…!」