樹里くんの様子が
少し気になっていた頃…。
「梨本弟、帰ってこないね」
隣にいた棗ちゃんが言った。
「うん…」
あの後、教室に着くなり樹里くんは
出ていってしまったきり戻ってこない。
おまけにもうすぐ昼休憩だ。
「朝のヤツ、まさかの果たし状とか?」
棗ちゃんがポツリと言った。
「は、果たし状って…!
そんな昔にあったみたいなこと
あるわけないよ…」
「はっ、どーだか。
あいつ、女遊び激しそうだったし、
恨まれごとあっても
おかしくなさそうじゃん」
「…それは、そうだけど…」
「でしょ?だったら有り得そうでしょ!」
棗ちゃんはケタケタと笑う。
「笑っちゃ可哀想だよ……」
私がため息をついたとき、
「あの、綾瀬ひよりさん、ですよね?」
と声をかけられた。
「あ、はい…何か…?」
「少しいいですか?」
彼は隣のクラスの男子だった。
「はい…」