───「待って!」



突然叫んだ彼女の声が響いて、
こちらに向かってくる音が聞こえる。



振り返ると、彼女が涙を流しながら
駆けてきている。



帰りたかった気持ちよりも、
自分の中にある彼女への愛しさの方が
大きすぎて、自分には嘘はつけなかった。



走って飛び込んできた彼女を抱きしめる。



「っ…ひよちゃん…」

「樹里くん…っ!私…っ……!
樹里くんの隣にいたいよ…!!
だから…っ…樹里くんの…
そばに…いさせてください…!」



彼女の涙ながらの言葉に、
俺の目からも涙がこぼれ落ちた。





「…うん。そばにいて…」



そばにいて、俺を見ていて。

俺も君を見ていたいから。



そして、いつか君が気付いたら
君の想いを俺に伝えて。



それだけで、俺は救われる気がするから。
それまでずっと、見守っているから。



それまでは、
長い時間に一緒に揺られよう。