「じゅ、樹里くん…?」


彼女の目が俺を覗き込む。



「……俺に襲われるかもしれないから、
ひよちゃんは早く帰りなよって、
いう意味で言ったんだけど」

「襲われる、って……樹里くんは
そんなことしないよ…」

「そんなことないよ。俺だって男だもん」




イライラする。


あいつらにも、ひよちゃんにも、
そして、自分にも……。





「俺…今、何するか分かんないよ。
逃げたほうが後悔しない」

「何言ってるの…?
今日の樹里くん、なんか変だよ…?」

「変なのはいつものことだよ。
3秒待つからここから逃げて」



ひよちゃんの肩から手を離して、
俺は背を向けた。




「……樹里くん…
なんでそんなこと言うの…?
私のこと…嫌いになっちゃったの……?」


彼女のすすり泣く声が聞こえた。