それが何なのか、俺には
すぐ理解できたはずなのに
それができなかった。
こぼれ落ちてくる雫の理由さえ
分からなくなるほどに、
ショックを受けていたのだと感じた。
「…っ…俺って…バカだな…」
抱きしめた時の温もりも、
あの笑顔も、泣き顔も、
あの時のキスも……。
何もかもが全て愛しかったはずなのに、
全て無かった事のように
崩れ去っていく。
俺には初めから、
何もなかったのかもしれない…。
───あれから、放課後になった。
ゆっくりと立ち上がり、
そっと教室にカバンを取りに向かう。
着いた教室にはもう、誰もいなかった。
教科書やノートをまとめて、
必要なものだけ鞄に入れると
教室中を見回した。
窓から差し込んだ夕日が、
部屋をオレンジ色に彩っている。
「……」
俺は少しだけ、唇を噛み締めた。
踵を返して教室を出ようとした時、
反対側から来た誰かとぶつかる。
「わっ」
「ひゃっ!?」
相手の声に聞き覚えがあった。
