「え?何か言った?」

「別にー。何でもなーい」

棗ちゃんは私の肩をポンと叩くと地面に座り込んだ。


「……郁ちゃん」

私はグラウンドでサッカーを続ける郁ちゃんを見た。

ふと、グラウンドの郁ちゃんと目が合う。


「!」

瞬間、私は目を見張った。


「ひより!」

郁ちゃんがグラウンドで手を振っている。


「えっ、ひよちゃん!?どこにいんの!?」

樹里くんがキョロキョロと私を探す。


(げっ、見つかりたくない…!)

私は郁ちゃんに手を振り返すと素早く身を隠した。


郁ちゃんにとって、何でもないことなのかもしれないけど、こうして手を振ってもらえただけでも幸せだって思える…。

少しは『特別』だって期待してもいいのかな?って
思っちゃうよ…。