「!」


樹里くんが走り出した自転車の
後ろを急に掴む。



「ちょっ!反射神経が働かなかったら
危なかったじゃん!」

「…なんで置いてこうとすんの?」



樹里くんが、捨てられた子犬のような
悲しそうな目で私を見た。



「ご、ごめん……って、何で!?
私、悪いことしてないじゃない!」

「スキありっ♡」

「あっ!」



樹里くんは私を後ろに寄せて、
サドルにまたがると、無邪気に言った。



「いっくぞー!」

「えっ、わっ?!きゃあぁあああぁあぁ!?」




すごい勢いで坂道を下っていく。

その途端、ザアッと風が吹き込んだ。



桜の花びらがひらひらと風に舞っている。



(今日から、三年生なんだよね…)



私は、道中に咲く桜の木々を
見つめながら思いにふけっていた。




「ねー!」


前で樹里くんが喋り出した。




「なぁに?」

「好きだよ!」


彼の言葉にきょとんとしてしまったけど、



「はいはい」


と、すぐに答える。