「…郁ちゃん、さよならっ。
幸せになってねっ!」



彼女は顔を上げて、
咲き誇るような笑顔を郁翔に見せた。



(…なんて顔で笑うんだ…)




それは今まで見てきた笑顔よりも、
綺麗な笑顔だと思ってしまった。




郁翔もその笑顔に、
しばらく固まっていた。



(あ、でも…)



彼女は今、いい顔をしている。


大きな壁を乗り越えたような、
そんな顔をしている。





(ナイスファイト、ひよちゃん)


俺は心の中で呟いた。






「ひより…………」




郁翔はひよちゃんに歩み寄ると、
ひよちゃんの髪を撫でた。