好きだと伝えたひよちゃんの手が
微かに震えているのに、俺は気付いた。
誰かに好きだと伝えることは
勇気がいることだと知ってる。
ひよちゃんは今、この恋を
乗り越えようとしているんだ。
(頑張れ、ひよちゃん…)
心の中で、彼女にエールを送る。
「…郁ちゃんの優しいとこ、
郁ちゃんの強くて男らしいとこ…。
いくつもの郁ちゃんを見て、私は
郁ちゃんにたくさん恋をしたの」
彼女の唇の両端が涙をこらえるのに
クイッと引っ張られる。
「郁ちゃんにこんなに幸せな気持ち、
たくさん教えてもらえて私は幸せだった…。
郁ちゃんは、優しい人だもん。
こんな人を好きにならない人は、
もったいないよ。
もちろん、私にももったいないくらい…!」
喋ろうとする度、彼女の目にどんどん
涙が溜まっていく。
「だから……郁ちゃんは、今の彼女さんを
その優しさで目一杯…っ…しっかり、
支えてあげて…大事にしてあげてね!
私、郁ちゃんを好きになって良かった!
想いを伝えられただけでも十分だよ……!!」
彼女は俯くと、郁翔の手を握る。
